滞納処分については、国税徴収法に詳しく明記されておりますが、法令にはあまり深く触れずに、役所が、実際にどういう実務をしているか触れていきたいと思います。
滞納処分ができる要件とは?
滞納処分(差押など)が、実施できる条件は、国税徴収法に記載されており、概ね次の流れとなります。
①各納税通知書を発送する。
②納期限までに納付がなされない。
③納期限までに納付がなされない場合は、納期限から20日以内に、督促状を発送する。
③督促状が発送されても、発送日から起算して10日を経過しても納付がなされない。
④差押実施可能。
となります。
(差押の要件)
第四十七条 次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
1滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないとき。
<引用:国税徴収法>
10日を経過した日が分かり難いのですが、とにかく督促状を発送した日から中10日を開けるように指示されていました。
例えば、ある月の1日に督促状を発送したとしたら、差押ができるのは、12日以降となります。
預金の差押えが実施されるまで・・・
実際には、法令の様にすぐに差押されるわけではなく、次の様に何段階か手順を踏んで、催告書を送付します。
①催告書(通常)
②催告書(財産調査実施通知)
③催告書(差押予告通知)
④催告書(最終差押予告通知)
これでも、納付の意思が無く、また何の連絡も無い場合は、差押となる可能性が非常に高くなります。
預金差押えの手順は? 民事との違い
さて、実際の預金差押の手続きですが、
通常の民事債権の場合の差押手続きは、概ね
①裁判により債務名義を得る
債務名義とは、請求権が存在することを公にするものです
②差押できる財産を探す。
③民事執行を申し立てる。
という手順になり、裁判所に申し立てて始めて、実施できます。
しかし、役所の場合は、裁判所に申し立てすることなく、滞納処分(差押など)ができます。
これは、役所の収納課に見事配属されると、徴収職員(徴税吏員)に任命されるのですが、徴収職員(徴税吏員)は、職権で滞納処分ができる権限を持っているためです。
ちなみにですが、配属されたばかりの徴収職員(徴税吏員)は、当然人様の財産を差押る事に抵抗を感じますので、初めての預金差押がなかなか実施できません。
しかし、最も手続きが容易な滞納処分となりますので、新人徴収職員(徴税吏員)の登竜門でもあります。
実際の事務的な流れとしては、次のとおりとなります。
①預金調査を実施する。
②預金があれば、差押を実施する。(滞納額に充ちるまで)
債権差押通知書を金融機関へ送達する。
金融機関に差押調書に署名を依頼する。
差押調書謄本を本人へ交付する。
③差押えた預金の取立(即日取立の場合)
取立日の翌日から起算して、3日以内に配当計算書送付する。(3日目が祝日の場合は翌日)
配当計算書を発送した日から7日を経過した日(中7日を開ける)に税金に充当し、充当通知書を送付する。
④即日取立せずに、納税相談となった場合
交渉により差押が一部解除される場合があります。
一部取立となった場合は、取立日の翌日から3日以内に配当計算書送付(3日目が祝日の場合は翌日)
配当計算書を発送した日から7日を経過した日に税金に充当する。
以上の様な流れとなります。
地方税回収機構(地方税滞納整理機構)が組織される様になってからは、機構からそのノウハウの手ほどきを受け、役所でも預金差押が、頻繁に行われる様になりました。
しかし、頻繁になったが故の諸問題も出てきている様です。
それについては、また次の機会に書きたいと思います。
とにかく、このような状況になる前に、郵便物はしっかり確認し、督促状、催告書が届いていた場合は、早めに連絡しましょう。
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