さて、ネットニュースでどこかの自治体が、納税猶予の記載例の氏名欄に【滞納太郎】と記載したことが大騒ぎとなり・・・
首長が謝罪までした・・・との事です。
件数はたった6件・・・
件数を調べたらたった6件だったそうです。
さらにそのうちの1つの事業者から苦情があったとの事・・・
件数は関係ないかもしれませんが、全国ニュースにまでなり、批判が集中、首長が謝罪せざるを得なくなるなんて、いくらコロナ禍といえど、異常としか思えません。
滞納太郎は適切か不適切か?
記載例の氏名が【滞納太郎】・・・
適切か・不適切かの2択と聞かれればですが・・・
【滞納】という言葉は文字通り、納付が滞っているという意味です。
要するに納期限までに納付していないことですので、良いイメージではありません。
ですので、あくまで【気持ちの問題】として不適切となるでしょう・・・
違法性はあるのか?
では次に、違法性があるのかという事です。
具体的には、侮辱罪や名誉棄損罪にあたるかという事ですが・・・
個別に通知している時点で、公然性はありませんので、どちらの罪にも該当しないでしょう。
民事ではどうか?
では、次に民事ではどうかという事です。
【滞納太郎】という記載例に対して、精神的な苦痛を受けたとの理由で、慰謝料請求が成立するかという問題です。
これは、提訴してみないと分かりません・・・
恐らく、勝訴は難しい様な気がします・・・
納税猶予の申請をしたら滞納ではなくなるのか?
ネット見ていると、猶予の申請をすれば、滞納ではないから、【滞納太郎】失礼だ・・・
との書き込みを多く目にします。
この点は、明確に国税徴収法にも記載されていませんが・・・
納税猶予中でも、延滞税は掛かります・・・
延滞税が掛かるということは、あくまで納税が猶予されているだけという事であって、当初の納期限を過ぎた時点で、滞納となるという解釈だと考えられます。
そもそも滞納でないのであれば、延滞税は掛からないはずですが、延滞税が掛かる時点で、納税の猶予期間中も滞納であるという事です。
そういう意味では【滞納太郎】とう記載例が、不適切であったとしても、納期限を過ぎれば、滞納という事実は、事実でしかないとう事です。
ネットやマスコミが煽りすぎ
どういう経緯でネットやマスコミにこの情報が流れたのかは不明ですが、まずネットやマスコミが煽りすぎですし、それに煽られて、【首長の謝罪】や【担当者を懲戒免職にしろ】などと要求・扇動することは、異常以外の何ものでもありません。
別に管理人は、同じ公務員として、擁護するつもりも弁護するつもりも全くありません。
ただ、失敗に対する非難のレベルが不相応だと感じるという事です。
公金を横領した訳でも、個人情報を漏えいした訳でもありません。
単なる記載例の誤字・脱字レベルの話で、失職事由の一つである禁固刑以上の刑に該当するレベルとはとても考えられません。
このレベルで懲戒免職になるのだったら、底辺公務員且つ素行の悪い管理人なんて、100回以上懲戒免職にされてもおかしくない事を何度もやっています。
通常であれば、上司と共に担当者が当該事業所に謝罪に行き、記載例を差し替えるという程度が妥当な範囲じゃないでしょうか?
もっと酷い氏名の記載例なんていくらでも思いつく
例えば、【滞納太郎】よりもさらに酷い氏名の記載例と・・・
徴収部門が思いつきやすそうな例としては・・・
- 差押太郎
- 捜索太郎
- 公売太郎
- 破産太郎
- 徴収太郎
- 強制執行太郎
- 競売太郎
- 猶予太郎
- 執停太郎
- 欠損太郎
- 不納太郎
- 督促太郎
- 納税太郎
- 換価太郎
- 充当太郎
- 債権太郎
- 脱税太郎
- 査察太郎
- その他もろもろ・・・
等々いろいろあります・・・
【滞納太郎】と比較すれば、もっとインパクトがある記載例なんていくらでも出てきます。
徴収部門の職員にとっては、【滞納】なんて言葉は日常茶飯事に使う言葉であり、ある意味で、あまりにも普通に使いすぎる言葉ですので・・・
担当者の【日常から普通に使っている用語なので、市民がどうおもうかまで配慮できなかった・・・】
というのは、正にそのとおりなんだと思われます。
恐らく記載例の上司の決裁は得ていない
6件というかなり少数の数ですので、おそらくこの記載例については、上司の決裁を受けていないでしょう・・・
電話で受けた担当者が、同僚と相談した可能性はありますが・・・
可能性としては、白紙の用紙に鉛筆書きで薄く記載した程度であるかもしれません・・・
少なくとも、業者に印刷を依頼する程の大量な枚数であれば、必ず上司の決裁や校正は、するとは思いますが、電話を受けた担当者が・・・
【本来は不要なレベルの申請書の記載例をサービス?として作った事がアダとなった・・・】とも言えます。
管理人も徴収部門にいましたので、もし管理人がこの電話を受けたとしたら、電話で説明して終了か・・・
若しくは、住所・氏名・押印とその他分かるところだけ書いてもらい、欄外に捨て印を押してもらって送付、残りの記載不備は役所側で直します。
別に記載例ごときで財産に損害を与えている訳ではない
はっきりいって、記載例なんてただの紙切れです。
しかも、納税猶予の申請書なんて、記載例がなくても字が読めれば書けます。
仮に分からなかったとしても電話で聞けば十分でしょう・・・
わざわざ記載例を要求する必要があったのでしょうか?
記載事項なんて
- 住所
- 氏名
- 猶予を希望する税目・金額
- 理由
- 納付計画
項目のとおり記載するだけです・・・
この際はっきり言いますが、こんな簡単な書類に記載例がいりますか?
項目の表題のとおりに埋めるだけですよ。
申請書の項目を読まないから記載例をよこせ等という話になるんです。
こんなことよりもっと酷い事が毎年各地で起こっているんだが・・・?
こんなささいな記載例よりももっと酷い事が毎年、全国のどこかで少なからず起こっています・・・
それは、課税誤りです。
課税額を誤って、多く請求したり、少なく請求し、還付したり、追加で請求することが、毎年全国のどこかで少なからず発生しています。
課税誤りは、還付や追加請求で、最終的には適正な課税がなされるとしても、一時的には、納税者の財産にかなりの影響を及ぼします・・・
しかし、それが大々的に報道されて、首長が謝罪なんて、聞いたこともありません。
せいぜいが地方新聞に小さく掲載されるくらいです。
【滞納太郎】の問題と比較して、どっちが大きな問題たと思いますか?
管理人は、【課税誤り】の方が重大性が高いと思います・・・
しかし、マスコミはつまらないから報道しない・・・
より行政を叩きやすい内容を過剰な形で報道する・・・
多くの人がそれに煽られて批判が集中する・・・
よく隣国を非難していますが、日本の民度も大して差が無いと感じてなりません。
まとめ
【滞納太郎】よりも【課税誤り】の方が酷いと思うがマスコミはあまり報道しない
ネットやマスコミは行政を叩きやすい記事を過剰な形で報道する
そもそも猶予期間中も延滞税は掛かるので滞納であることには変わりない
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