残念ながら滞納者の中には一定数ですが、滞納慣れされている方がいらっしゃいます。
海千山千の滞納者ともなれば、交渉は熾烈となり中々話は進みません・・・
あの手この手で払えない理由をまくし立て、時には議員を使ったり、人事部門にクレームを入れる事もしばしばあります。
経験の少ない・徴収職員・徴税吏員であれば、メンタルがやられることもあるでしょう・・・
滞納整理も基本は、その地区を任されたらワンオペです。
回りもみんな忙しいので、なかなか相談してチームで対応できるような体制にはなっておりません。
海千山千の滞納者を生んだのもある意味では昔の役所の責任
昔の役所の滞納整理は、とにかく甘かったと言わざるを得ません。
強い滞納整理をしてこなかったばかりに、際限なく滞納者を増やしてしまったと言っても過言ではありません。
よくあるパターンの一つに国民健康保険税(料)があります・・・
どこの役所でも年に数回は、国保の資格呼び出しというものをやっています。
これは、国保の滞納者に対して、新しい保険証が欲しければ、窓口に納税交渉しに来いという類のものです。
昔は、滞納整理が甘々でしたので、窓口に来ても、毎月いくら払うかという分納誓約(無担保)をすれば、新しい保険証を出していました・・・
全く納付が無くても次年度も同じ様に、分納誓約を出せば、新しい保険証を出すということを繰り返していたわけであります。
さて・・・これが数年続けばどうなるでしょうか・・・?
あっという間に、延滞税を含めて・・・
3桁万円の大台に乗ってしまします・・・
挙句の果てには・・・
どこかの別の市町村に転出されでもしたらそれで連絡が取れなくなり完全にアウトです。
こういうケースが管理人が滞納整理をやっていた時も塩漬け案件として、いくつかありました・・・
伝家の宝刀の最後の手段!諸刃の剣!あまりオススメしない方法だが最後にはやむを得ない!
まず、滞納整理で一番大切なことは、対等の立場で(できればこっちが有利な条件で)交渉のテーブルに乗せる事が大切です・・・
しかし、海千山千の滞納者は通知を送っても無視・・・
電話をしても無視・・・
とにかく交渉のテーブルに乗ろうとはしません・・・
ここで、どうするかが問題となります。
差押さえる事ができる財産があれば、速やかに差押さえれば良いのですが、特に県外に転出されるとなかなか財産調査もままなりませんし、捜索に行くことも困難となります・・・
海千山千の滞納者でも金融機関からの督促は恐れる!
ここで、最後の手段として利用するのは、金融機関です。
海千山千の滞納者でも金融機関からの督促は恐れます。
ですので、この金融機関を利用させていただきます。
海千山千の滞納者といえども、金融機関にかたっぱしから預金調査を掛ければ、いくつか口座は見つかる物です。
その中で、反対債権がある物を探します。
要するに、金融機関から借金している口座を見つけるわけです。
そこの普通口座に数円でもお金が入っていればそれを差し押さえます。
本来は、国税徴収法第48条に「無益な差押え」は禁止されているので、厳密的にはアウト・・・だと思います。
しかし、それは最後は裁判になって、裁判官が判断するものです。
そこまで、いかなければ、誰も無益な・差押えとは判断できないわけです。
何をもって「無益と判断するのか・・・」
最終的に、この方法を取ったからといって、これがきっかけとなり海千山千の滞納者が交渉のテーブルにのり滞納が改善されれば、「無益だったとは言えない」とも言えます。
国税徴収法一部抜粋
(超過差押及び無益な差押の禁止)第四十八条
国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押えることができない。2 差し押えることができる財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額をこえる見込がないときは、その財産は、差し押えることができない。
ちなみに、反対債権のある口座を差し押さえると金融機関としては、次のどちらかの行動をとらざるを得ません。
- 役所の差押えを受け入れる
- 役所の差押えを受け入れずに期限の利益を喪失させて残債を一括請求する
上記のどちらかとなります。
しかし、まず金融機関として、「役所の差押えを受け入れる」事はしません。
何故なら多くの金融機関の内規で、そういう場合は「期限の利益を喪失させて残債を一括請求する」という事が決められているからです。
また、前述のとおり国税徴収法では「無益な差押えが禁止」されていますので、一般的には、反対債権がある口座を差し押さえても換価・充当できないので、差押えされる事が無いというのが大方の理解です。
しかし・・・ここで、敢えてその反対債権のある口座を差押えます・・・
すると金融機関はかならず次のどちらかの対応を迫られる事になります・・・
- 役所の差押えを受け入れる
- 役所の差押えを受け入れずに期限の利益を喪失させて残債を一括請求する
こうなると、金融機関は、「役所から差押えされたけど、どうなってんのよ?」という連絡を、 海千山千の滞納者にするわけです。
当然、海千山千の滞納者は、役所に連絡を取ってきます。
ここからがようやく交渉です。
差押えを解除して欲しければ、実際に守れる且つ役所としても妥協できる分納誓約を出せと言う訳です。
また、分納誓約を守らなければ、同じ事の繰り返しになるよと、はっきりと伝えます。
海千山千の滞納者は、金融機関に財産を一括返済するか、役所に分納誓約を出し、しっかりとその約束を守るかの2択を迫られるわけです。
管理人も実は滞納整理をやっている時代に、ヤバイとは思いながらも、止むを得ずこの方法を取ったことがあります。
幸い、裁判等になることなく、役所が妥当できる範囲内で分納誓約が為され、無事に完納となっています。
やはり3桁万円を超える滞納を作っておきながら、県外に逃げていく輩は許せなかったんです。
その場限りの調子の良い事だけ言って、新しい保険証を出させる・・・
最初から税金を払う気が無いなら、全額自費で受診しろよと言いたくなります。
人権好きの弁護士には格好の餌となるので要注意!
ただし、この方法は「無益な差押え」に該当となり、人権好きの弁護士には格好のエサとなる可能性が非常に高いので要注意です。
伝家の宝刀は、抜かずに脅すために使うものであり、抜いてしまっては諸刃の剣となってしまします。
その点だけは、注意してください。
さて、滞納整理シリーズは、ネタ切れとなりましたので、ここで一端終了します。
こういう場合はどうしたら良いか?等の個別のご質問がありましたら、役に立つか分かりませんが、管理人の個人的見解で回答させていただきますので、コメント欄でご質問ください。
まとめ
海千山千の滞納者には最後の手段を取る
反対債権ありの口座の差押えは諸刃の剣だが滞納者を交渉のテーブルに引きずり出す最後の手段となり得る
無益な差押えとなる可能性があり人権好きの弁護士の格好のエサとなる可能性が高い
伝家の宝刀を抜くには抜く方にも相応の覚悟が必要
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