自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の無罪判決で、静まり返る傍聴席という記事がありました。
意識障害だったら無過失なのか・・・?
裁判の内容は次のとおりです。
前橋市北代田町の県道で2018年1月、乗用車で女子高校生2人をはねて死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた男(87)の判決公判が5日、前橋地裁で開かれた。
国井恒志裁判長は「(事故前に陥った意識障害の)予見可能性は認められず、運転を避ける義務を負わせることはできない」として無罪(求刑・禁錮4年6月)を言い渡したとのことです。
簡潔に言うと予見できない意識障害で事故を起こしても過失がないという事です・・・
被告の方には、低血圧やめまいの症状があったそうですが、「めまいの原因が低血圧であることを示す医学的根拠は見当たらない」と裁判官は指摘しました。
また、慢性的な低血圧によって意識障害が生じた事実はない事から、医師からの指示も生活上の指導にとどまっており、検察側が主張する「医師が意識障害を生じる恐れから運転しないように注意していた」などとする訴えは認められないとしたそうです。
さらに今回の事故につながった意識障害については、服用していた排尿障害の薬の副作用による急激な血圧低下が原因となった可能性があると説明し、被告が医師から服用により血圧が下がるといった副作用が生じることについて説明を受けた証拠はなく、「意識障害が生じることを予見することはできなかった」という結論に至ったとの事です。
無罪判決の根拠は何・・・?
2014年5月20日施行の自動車運転死傷行為処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)には、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」として、具体的に次の6種の疾患が挙げられていいます。
なお、これに違反した者には「最長15年の懲役刑」という厳しい罰則が課せられます。
自動車運転死傷行為処罰法第3条(危険運転致死傷)
1.アルコールまたは薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコールまたは薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。
2.自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。
なお、法務省が公開している資料には、「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」として、次の6種の疾患が挙げられています。
- 統合失調症
- てんかん
- 再発性失神
- 低血糖症
- 躁鬱病
- 重度の睡眠障害
一方で、罪に問われないケースとして・・・
例えば、突然の脳卒中や心筋梗塞のケースがあります。
この場合、運転前に飲酒していた等の要因が重ならなければ、刑事罰に問われることはほぼないだろうというのが大方の見解の様です。
脳卒中や心筋梗塞、若しくはその後の事故が原因で運転手が死亡してしまった場合、「居眠り運転」等と判断されることもあるかもしれないが、いずれにせよ運転手が死亡していれば、容疑者死亡で不起訴となる・・・とのことです。
判決内容に若干矛盾も感じるが・・・?
このことから判例主義でいけば、前述の6種の疾患に該当していない事と意識障害が予見できなかった事(この点で突然の脳卒中や心筋梗塞と無理やりこじつけて)無題と判断したのかもしれません。
しかし・・・なんだか判決内容を読んでいて矛盾を感じます。
低血圧によって意識障害が生じた事実はないと言っておきながら・・・・
被告には低血圧やめまいの症状があっとししています。
めまいでも十分事故を起こす可能性はあるでしょう・・・
また、服用していた排尿障害の薬の副作用による急激な血圧低下が意識障害の原因となった・・・とも言っています。
薬の影響か否かは別として、結果的に血圧が低下して意識障害になっていると判断していますので・・・
低血圧によって意識障害が生じた事実はないという裁判官自信の判断と矛盾しているように思えます。
医師が薬の副作用を説明していないから無罪といのは無理じゃないか?
詳細な判決内容不明なため、いずれにしても分からない事もありますが・・・
一般的に医師にしてみれば、患者が自動車を運転する事があるかどうか、なんて関係ありません。
医師は病気を治療する事が仕事であり、患者が自動車を運転するか否かまで責任は負えませんし、負う必要もありません。
裁判の記事を見る限りでは、まるで「医師が薬の副作用を説明していないから悪い」と言っているとも取れます。
一般市民の感覚からすれば、この裁判官は一体何を言っているのだ・・・?
と思われる方が大半ではないでしょうか?
管理人もその一人です。
被告を無罪判決にして、主治医がちゃんと説明していなかったからと責任を転嫁している訳ですから・・・
こんな判決が出る様だったら今後は医者も大変になります。
十分予見可能だったと感じるのだが・・・
今回のケース、良好な健康状態の方が、突然脳卒中や心筋梗塞になったケースとは異なります。
持病を持っており、服薬していたとなれば、当然ですが薬剤情報提供料文書は出されていたと事でしょう・・・
薬剤師法第25条の2においてしっかりと明記されています。
薬剤師法一部抜粋
[ 情報の提供 ]
第25条の2 薬剤師は、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、調剤した薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならない。
その資料には当たり前に(用法・用量・効能・効果・副作用・相互作用)が記載されている筈です。
それをしっかりと読んで、薬のメリット・デメリットを理解して服薬する権利と義務が患者側にはあります。
この点において、医師の説明の有無は関係なく、薬の副作用を患者自信が知っておく義務があり、それを説明が無かったから知らなかったでは済まされません。
薬剤情報提供料文書しっかりと読んでいれば十分予見可能であったろうし、読んでいないとしたら読んでいないこと自体が十分に過失と認定されるべきであると考えます。
管理人も毎日服薬しているので、薬を飲んだ後はなるべく運転しない様にしています。
裁判官の浮世離れも甚だしいと思う・・・
裁判官の身分は、憲法78条・80条2項・裁判所法48条等により非常に厚く保護されています。
憲法一部抜粋
第七十八条
裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
第八十条
2下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。
裁判所法一部抜粋
第四十八条(身分の保障)
裁判官は、公の弾劾又は国民の審査に関する法律による場合及び別に法律で定めるところにより心身の故障のために職務を執ることができないと裁判された場合を除いては、その意思に反して、免官、転官、転所、職務の停止又は報酬の減額をされることはない。
裁判官は、憲法76条第3項において「その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」明確に規定されています・・・
簡単に言えば買収されない為に、非常に厚く身分が保護されている訳です。
これは悪い事ではないと思います・・・が・・・
悪く言えば、非常に厚く身分が保護されているが故に、一般的な庶民の感覚からは、かなりかけ離れていると言えるでしょう。
心身の独立が保護されている為、同調圧力も掛かりませんし、独りよがりの好き勝手な判決を出せるとも言えます。
司法試験に合格するくらいですから、勉強はできるのは確かですが、だからと言って決して常識人であるとは限りません。
裁判官も一公務員です。
なにも特別視する必要もありません。
身分保障も一般の公務員と同等でいいのではないでしょうか?
裁判官の生活について・・・
とある弁護士さん(元裁判官)の記事で次のようなものを見つけました。
裁判官の仕事の大半は裁判所の建物の中で行い、生活も官舎が大半のため、裁判官の交遊関係は狭くなる傾向にある。
また「世界が狭く、生活が保証された中で仕事をしているため、1件1件の裁判の重みを感じなくなって、謙虚さまで失っていく」とありました。
さらに「裁判官になるには、少なくとも5年以上の弁護士経験が必要ではないか」と付け加えています。
まさに今回の判決は、この弁護士さんがおっしゃる様な「1件1件の裁判の重みを感じなくなって、謙虚さまで失っていった」結果の判決なのかもしれません。
まとめ
薬の副作用を医師が説明していないから事故を起こしても無罪は世間一般の常識からはかけ離れている
裁判官は勉強はできるかもしれないが一般的な社会常識が無い?
身分保障が手厚すぎて浮世離れし過ぎている?