税金の滞納・承諾による給与の差押えとは!こうなる前に早めの相談を!

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040-滞納整理

給与差し押さえの前回の記事

「税金の滞納・給与の差押えとは!こうなる前に早めの相談を!」

で、ご紹介したとおり・・・

自分には生計同一家族(被扶養者)が多いから、給与の差押えがされる事が無い!

(計算上は、給与の支払額が差押え禁止額以下である場合)

と安心された方・・・

その考えは危険です!

給与の差押え禁止額について

役所の徴収職員(徴税吏員)にとっても、「給与の差押え」が止むを得ない場合に実施することは、前回の記事

「税金の滞納・給与の差押えとは!こうなる前に早めの相談を!」

で、ご紹介したとおりです。

しかし、給与調査の結果、給与の支払い額が、計算上の差押え禁止額以下である場合は、給与の差押えはできません。

給与の差押え禁止額・差押え可能額については次のとおりです。

①税金(所得税・住民税等)

②健康保険・年金等の社会保険料

③10万(本人の生計維持費)

④被扶養者×4.5万

⑤総支給額 -(①+②+③+④+⑤) × 20%

⑥差押え可能額 = 総支給額 ? (①+②+③+④+⑤)

⑥ > 0 の場合に差押え可能

しかし、これはあくまで計算の問題です。

例えば、滞納者に次のとおり生計同一家族がいたとします。

妻 所得無し

子1 所得無し

子2 所得無し

この場合は、生計同一家族に所得が無い為、国税徴収法第76条第1項第4号の規定に従い、差押えすることはできません。

しかし・・・次の場合はどうでしょう・・・

妻 所得有り

子1 所得有り

子2 所得有り

滞納者の給与に関係なく、生計同一家族が自身の生計を維持できる所得がある場合です。
国税徴収法をもう一度確認してみます。

<国税徴収法一部抜粋>
(給与の差押禁止)
第七十六条 給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権(以下「給料等」という。)については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差し押えることができない。この場合において、滞納者が同一の期間につき二以上の給料等の支払を受けるときは、その合計額につき、第四号又は第五号に掲げる金額に係る限度を計算するものとする。
一 ~ 三 省略
四 滞納者(その者と生計を一にする親族を含む。)に対し、これらの者が所得を有しないものとして、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第十二条(生活扶助)に規定する生活扶助の給付を行うこととした場合におけるその扶助の基準となる金額で給料等の支給の基礎となつた期間に応ずるものを勘案して政令で定める金額
五 省略
2 ~ 4 省略
5 第一項、第二項及び前項の規定は、滞納者の承諾があるときは適用しない。

国税徴収法第76条第1項第4号には、「生計同一者が所得を有しないものとして」という規定があります。

つまり、「生計同一者」が「滞納者の被扶養者」である事が条件となっています。

ですので、「生計同一者」が所得税法の扶養控除の範囲を超えるような所得がある場合は、

「④被扶養者×4.5万額」額

を給与の支払い額から差し引く必要が無いという事になります。

しかし私が「徴税吏員」やっていた間は、役所内のルールとして、念のため計算上は、

「生計同一者の所得の有無に拘わらず」

「④被扶養者×4.5万の額」

を給与の支払い額から差し引いておりました。

この場合、前述のとおり、「生計同一者に所得があっても、その人数」によっては、「給与の支払い額が、差押え禁止額以下」となり給与の差押えができないという矛盾となります。

承諾による給与の差押えとう方法がある!

さて、だからと言って役所は給与の差押えを簡単には諦めません。

何故なら、安定した所得がある滞納者から最も確実に滞納税を徴収する方法である為です。

再度、国税徴収法を確認してみます。

<国税徴収法一部抜粋>
(給与の差押禁止)
第七十六条 給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権(以下「給料等」という。)については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差し押えることができない。この場合において、滞納者が同一の期間につき二以上の給料等の支払を受けるときは、その合計額につき、第四号又は第五号に掲げる金額に係る限度を計算するものとする。
一 ~ 三 省略四 滞納者(その者と生計を一にする親族を含む。)に対し、これらの者が所得を有しないものとして、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第十二条(生活扶助)に規定する生活扶助の給付を行うこととした場合におけるその扶助の基準となる金額で給料等の支給の基礎となつた期間に応ずるものを勘案して政令で定める金額
五 省略
2 ~ 4 省略
5 第一項、第二項及び前項の規定は、滞納者の承諾があるときは適用しない。

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国税徴収法第76条第5項に

「滞納者の承諾があるときは適用しない」

という規定されております。

つまり、納税交渉により滞納者から承諾を得られた場合は、「差押え禁止額に関係なく給与の差押えが実施できる」ということです。

この方法は、「奥の手の一つ」的なものでありますが、どうにも納税交渉が進まない場合は、この方法を使わざるを得ません・・・

給与差押承諾書の例文はここからダウンロード

年金差押承諾書の例文はここからダウンロード

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滞納者が承諾しなかったら・・・

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滞納者が承諾しなければ、もちろんこの方法が使えません・・・

しかし、この時点では既に勤務先に給与調査がなされているので、勤務先に税金の滞納がある事がバレています。

ここが非常に重要なポイントとなります。

勤務先のコンプライアンス(法定遵守)がポイント

コンプライアンス(法令遵守)が厳しい今の世の中では、多くの勤務先はそのイメージダウンを非常に嫌います。

ということは、従業員の社会的評価も非常に気にするという事になります。

つまり、自社の従業員が税金を滞納しているいう状況は、好ましくないと考えることが多いという事です。

勤務先が滞納者に「承諾による給与の差押え」を説得する場合が案外多い!

再度記載しますが、コンプライアンス(法令遵守)を重要視する勤務先は、従業員もクリーンな状態であることを望む傾向があります。

ですので、従業員に税金の滞納があれば、その問題を解消する為に、

勤務先側が滞納者に対して「承諾による給与の差押え」を説得する

という場合が案外あります。

また、レアケースですが、比較的小規模な勤務先では、

「給与の差押えの手続き」を面倒と感じる場合があります。

しかしコンプライアンス(法令順守)は重視しておりますので、従業員にはできればクリーンな状態となって欲しいということで、

「毎月会社が一定額を代納し、その分を給与から天引するという」

特別徴収の様な方法を取っていただける場合もあります。

法令上、税金の納付方法について、第三者が代納する事は妨げませんので、役所にとっては有難い限りです。

勤務先から説得されれば、滞納者も断ることができない場合が多い様です。

このような場合、徴収職員(徴税吏員)にとっては、滞納者の勤務先を上手く味方に付ける事が重要ポイントとなります。

まとめ

給与の差押えは承諾でもできる

コンプライアンス(法令順守)を重視する勤務先は、従業員が滞納者である事を好ましく思わない

コンプライアンス(法令順守)を重視する勤務先は、従業員の滞納を解消する為に、滞納者に対し、「承諾による給与の差押え」を説得する場合がある。

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