慣れとは恐ろしいもので、税金の滞納も慣れてくると板に付いてきます。
「滞納者」については、これまでは、 言葉に配慮し 「税金を滞納されている方」 と 柔らかく表現してきましたが、この記事以降「滞納者」と明記します。
ちなみに「滞納者」とは、「国税徴収法に定義」されいているれっきとした「法律用語であり、「差別用語」では無いことを申し添えておきます。
国税徴収法一部抜粋
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 ~ 八 省略
九 滞納者 納税者でその納付すべき国税をその納付の期限(国税通則法第四十七条第一項(納税の猶予の通知等)に規定する納税の猶予又は徴収若しくは滞納処分に関する猶予に係る期限を除く。)までに納
税金の滞納も慣れてくると、預金の差押えは、いたちごっこ!
こういう状況になってしまうと、滞納者と役所の間で、いたちごっことなり、預金の差押え合戦の様相を呈してきます。
徴収職員(徴税吏員)は、財産調査で口座のお金の動きは把握できます。
ですので、給与の振込み日等の入金がある日を狙って預金の差押えに行きます。
9時前に銀行に行き、シャッターが開くと同時に、それを潜り抜けて、銀行の窓口に駆け込み、預金の差押えをする訳であります。
以前であれば、この方法により7~8割前後の確立で、預金の差押えが可能でしたが、世の中便利になったもので、最近では、コンビニエンスストアでも、9時前に預金の引き出しが出来るようになってしまいました。
これにより、銀行の開店と同時に、預金の差押えを実施しても、空振りする確率が非常に高くなってしまいました。
ごくまれに、預金の差押えを自動口座振替えぐらいにしか思っていない人もいます!
また、レアケースですが、同業者でも毎回税金を滞納し預金の差押えとなっている方がおられましたが、その方はいつも口座に数百万円以上の残金がありました。
預金の差押えを行っても、電話連絡の一つもありません。
よほど忙しくて、時間が無いのか、ルーズなのか不明でしたが、自分で納付することはありませんでしたので、預金の差押えを自動口座振り替えぐらいにしか、思っていなかったのかもしれません。
預金の差押えは、空振りしたら、何度かリトライする
さて、預金の差押えが空振りした場合は、翌月にリトライする訳であります。
何回かリトライしていると、タイミングが上手く合って、預金の差押えが実施できる場合がありますが、それも何度か繰り返している内に、滞納者も徹底した回避を取る様になり、毎回9時前には預金を引き出す様になってしまいます。
こうなってしまうと、預金の差押えは、お手上げ状態となります・・・
さて、預金の差押えが出来なくなった場合、役所の次の手はなんでしょうか・・・?
預金の差押えができなくなったら、次は、給与の差押え!
先ほど、徴収職員(徴税吏員)は、財産調査で口座のお金の動きは把握できますと記載しました。
つまり、給与等を支払っている勤務先が分かる訳であります。
勤務先への給与調査や給与の差押えは、個人へのダメージ(社会的信用の失墜等)が大きい為、本来ならば徴収職員(徴税吏員)としても、なるべく取りたくない滞納処分であります。
しかし、預金の差押えが実質的に出来ない以上は、この方法を取らざるを得ません。
個人の信用よりも納税秩序を守るという社会的利益の方が重要なのです。
さて、給与の差押えをするには、まず給与調査を実施する必要があります。
これは、国税徴収法に、給与の差押え禁止額が明記されており、その差押え禁止額を超える支払いが無いと、給与の差押えが成立しないからです。
国税徴収法一部抜粋
(給与の差押禁止)
第七十六条 給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権(以下「給料等」という。)については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額は、差し押えることができない。この場合において、滞納者が同一の期間につき二以上の給料等の支払を受けるときは、その合計額につき、第四号又は第五号に掲げる金額に係る限度を計算するものとする。
以下省略
具体的には、
毎月の給与の総支給額から、次のものを差し引いた額が差押え可能額となります。
①税金(所得税・住民税等)
②健康保険・年金等の社会保険料
③10万(本人の生計維持費)
④被扶養者×4.5万
⑤総支給額 -(①+②+③+④+⑤) × 20%
差押え可能額 = 総支給額 – (①+②+③+④+⑤)
給与の差押え可能額の算定エクセルは、こちからから!
事例としては、
下図のとおりとなります。
尚、端数処理については、
給与は1,000円未満切り捨て
給与から引かれる額は、1,000円未満切り上げとなります。
しかし、扶養家族(同一生計家族)が多くいる場合は、その家族の所得がどれだけあろうと、よほどの高給取りでない限りは、給与の差押えができないこととなります。
先の事例では、生計同一家族が、4名いると差押え可能額がマイナスとなり、給与の差押えができません。
さて、給与調査の結果、差押え禁止額を超える給与がある場合は、給与の差押さえが可能となります。
まれに、行儀の悪い勤務先で、給与調査等に応じないケースがありますが、質問調査権と罰則規定を明記したものを持って臨場すると大抵の場合は素直に応じます。
国税徴収法一部抜粋
(罰則)
第百八十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第百四十一条(質問及び検査)の規定による徴収職員の質問に対して答弁をせず、又は偽りの陳述をした者
二 第百四十一条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は当該検査に関し偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類を提示した者
上記のとおり、質問調査に応じない場合は、懲役又は罰金となりますので、徴収職員(徴税吏員)から質問調査を受けたら、素直に応じておきましょう。
さて、実際に給与の差押え手続きを勤務先に依頼すると、勤務先によっては、滞納者を説得してくれて、自主納付に至るケースもあります。
滞納者は、役所の言うことは聞かなくても、勤務先の言うことは聞く様です。
しかし中には、従業員で滞納者がよほど多いのか、機械的に淡々と給与の差押え手続きを実施する勤務先もあります。
こういう勤務先は、殆ど人事担当様と、電話等でやりとりすることなく、事務手続きが進んでいきます。
都会に本社がある様な、比較的大きな勤務先に多い傾向です。
預金の差押えを回避して、 徴収職員(徴税吏員)を追い詰めると ・・・
繰り返しになりますが、最近は、便利になり預金の差押えについては、9時前に引き出すことで、回避することができます。
しかし、これを繰り返していると、結果的に徴収職員(徴税吏員)を追い詰めることとなり、給与の差し押えをせざるを得なくなります。
やはり、この様な状況になる前に、早めに相談することをオススメします。
まとめ
税金を滞納すると、預金を差し押さえられるが、回避することは可能・・・?
しかし、預金の差押えを回避しても、次は給与が差押えられる
生計同一の家族が多いと、給与の差押えができない場合がある
しかしそれでも給与の差押えができる場合がある
それは、次回に説明
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