本題に入る前に、本年(2019年)の台風で被害に遭われた方々には、大変な苦労をされていることを、心よりお見舞い申し上げます。
さて、インターネットで、本年(2019年)に関東地方を中心に甚大な被害をもたらした、台風15号、19号、20号に関して、避難所の特集がありましたので、それについて触れたいと思います。
特集の詳細(ざこ寝、プライバシーなし・・・・「避難所の劣悪な環境」なぜ変わらないのか)は、

を参照してください。
特集では、日本の避難所の環境は劣悪で、昭和の頃から全く変わっていないと断罪しています。
要するに「行政が悪い!」ということですね。
主な問題として指摘していることは・・・
①ベッドが無くざこ寝 → エコノミークラス症候群の発症率が高くなる
②欧米と比べて、環境が悪い
(欧米では、ベッド、水洗トイレ、食事も普通とのことです)
③自治体職員の知識が低いこと
を上げています。
さて、行政目線からこの指摘に対して、「反抗する訳ではありませんが、出来い理由を」述べていきたいと思います。
日本はそもそも布団文化 文化圏が異なるのでは?
①のベッドが無くざこ寝については、最近は、変わってきたと思いますが、そもそも日本は、「布団の文化」です。
欧米人と異なり、「昔からベットを使用してた民族」ではありません。
確かに、体育館等の硬い床の上に直に寝るのは、辛いと思いますが、「布団を敷けば」解決できるのでは・・・?
最近では、「足腰の不自由な人(床に寝転がれない)」の為に、ダンボールベッド等も備蓄しています。
そもそも文化圏が異なるということです。
支援物資を確保するだけの十分な財源があるのか?
②の欧米と比べて、環境が悪いについては、単なる財源の問題です。
殆どの地方自体の経常収支比率「(経常収入÷経常支出)×100」は、90%を超えております。
経常収支比率が、90%を超えると、自治体の特色を活かした事業はできません。
その中でも、近年大きな支出を占めているのが・・・
扶助費(社会保障制度の一環として、生活困窮者、児童、老人、心身障害者等を援助するために要する経費)です。
扶助費の中でも特に、児童福祉費や社会福祉が増加している様です。
児童手当や児童に対する税制上の措置は、下図を参考にしてください。
フランスは、突出して優遇されていますが、その他の国と比べれば、人口を考慮すると日本はマシな方です。
次に、医療費については、どうでしょうか?
・社会保険方式(日本、ドイツ、フランス)日本のみ国民皆保険
・税方式(イギリス)国民皆保険
・民間保険(アメリカ)
やはり人口規模を考えると、日本の医療制度は、優れていると思います。
人口(2018年)
- 3位 アメリカ 327.35百万人
- 10位 日本 126.50百万人
- 17位 ドイツ 82.90百万人
- 21位 イギリス 66.44百万人
- 22位 フランス 64.73百万人
- 86位 スウェーデン 10.23百万人
結局、パイをどう切り分けるか(どこに予算を使うか取捨選択する)ということです。
例えば、扶助費を削れば、それだけ避難所対策に予算を回せるでしょう。
しかし、実際のところ、「来るか来ないか分からない災害に対策にお金を使うよりも」、「目先の生活の方を優先」する方が多いと思います。
議員さんも、そちらの方が票を稼ぎやすいのではないでしょうか?
避難所スフィア基準との比較
スフィア基準と日本の避難所ガイドラインとの比較
日本の基準
トイレ → 50人当たり1基
居住スペース → 1人当たり2m2
スフィア基準
トイレ → 20人当たり1基
居住スペース → 1人当たり3.5m2
スフィア基準とは
国際社会における人道対応の事実上の基準であり、被災者すべてが平等かつ公平な支援を受けるための基準。
確かに、内閣府の基準は、スフィア基準よりも劣っています。
しかし、現実問題として、大きな災害は発生した際に、その地域全員を収容できる避難所なんてあらかじめ用意しておくことができるでしょうか?
日本は、人が住める平野部が極端に狭い地形をしています。
次の人口密度を参考にしてください。
人口密度(2018年)
- 25位 日本 334.72人/km2
- 49位 イタリア 200.72人/km2
- 142位 アメリカ 33.29人/km2
- 183位 カナダ 3.71人/km2
人間が事実上住めない山間部を差し引くと、さらに人口密度の差が開くと考えられます。
そもそも、地理的に多くの避難所を確保することが困難なのです。
自治体職員の質は本当に悪いのか?
③の自治体職員の知識が低いことについては、そもそも日本の政治が悪いのです。
国は、地方に力を付けられると、都合が悪いのです。
つまり国にとって地方は従順であるべきで、歯向かって欲しくない訳です。
ですので、地方が力を付けない様に、国は省庁採用で、どんどん専門家を育成する中、地方は、一括採用方式とし、定期的に人事異動させ、専門家が育たないような構造を取ってきました。
自治体職員は、概ね3年前後で、別の部署に異動し、以後その繰り返しですので、そもそも専門的な職員が育たない環境なのです。
専門的な職員が育たない = 組織の弱体化 = 国に逆らえない
という構図ですね。
これが、脈々と継続されておるわけです。
自助・共助・公助とは?
こういう訳ですので、大規模災害時に行政が上手く支援できる筈もありません。
阪神淡路大震災以降、20年以上経過した今日でも、
自助:共助:公助 = 7:2:1
と言われております。
要するに国は「自分の命は、自分で守れ」と言っているのであります。
こういう現実を把握せずに、ただ「現状を嘆いて非難しても」世の中は変わりません
結局「国や政治家が何を考えて動いているのか」を良く考えれば、自ずと自身の身を守る為には何をすべきかが分かってくると思います。
そもそも日本という国で行政をアテするのは間違いなのです・・・
まとめ
日本避難所の環境が悪いのはホント
日本の地理的な条件で、避難所の質を改善するのは難しい
いつ起こるか分からない災害にお金を掛けるよりも、目先の生活を優先したいと考えている人の方が多い
そもそも社会保障制度や地理的条件が異なる外国と比較する事がナンセンス
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