仕事の関係で機会があり消防ポンプ自動車の機関部を見る事ができましたので紹介いたします。
排ガス規制で継続生産のトラックは2019年9月1日以降は新車登録不可!
排ガス規制の関係で、2019年9月1日以降は、継続生産のトラックは、排ガス規制に適合させないと、新型登録ができなくなりました。
消防ポンプ自動車(CD-1型)は、概ね5トン未満となりますので、規制の対象となります。
この為、2019年度以降に消防ポンプ車を製造する場合は、排ガス規制に適合したベース車両を用意しなければなりません。
排ガス規制の主な内容については、窒素酸化物(NOX)の規制が強化です。
この規制に対応する為には、窒素酸化物(NOX)を窒素と水に分解する尿素SRC装置を付けなければならなくなりました。
これにより、消防ポンプ車(CD-1型)のベース車両である「イスズのエルフ」と「日野のデュトロ」は、2019年にマイナーチェンジしました。
ベース車両のトラックの価格が約100万高くなった!
排ガス規制に対応する為、消防ポンプ車のベース車両にも尿素SRCが付いた訳ですが、このせいで車両価格が約100万高くなりました。
正直なところこの100万円はかなり痛いです。
環境問題がいくら重要とは言え、特にトラックの装備が変わった訳ではありません。
機能的には旧型と全く変わらないにも拘わらず、約100万高くなった訳ですから、なかなか説明が付かずに、予算を確保するのが難しいのです。
尿素SRC装置のせいで、レイアウトが厳しくなった!
消防ポンプ自動車は、いろいろな消防資機材を積載しています。
ですので、結構収納庫のレイアウトが問題となります。
尿素SRCが結構場所をくっているので、そのせいで収納庫のレイアウトが厳しくなり、1箇所ですが収納庫を減らさざるを得なくなりました。
尿素SRCのアドブルーは、1回の満タンで、1万~1万5千キロ程度持ちますが、無くなったらエンジンが掛からなくなります。
消防ポンプ自動車は、長距離トラックと違い、そんなに走行距離は走りませんので、本当に忘れた頃にアドブルーが無くなりそうで怖いです。
今一番心配なのは、滅多に補充することはないと思われるので、いざ現場に行かなければならない時に、アドブルーが切れて走れなくなることです。
ポンプ部の構造は?
ポンプ部は、簡単に説明すると
①真空ポンプ
②水ポンプ
に分かれています。
真空ポンプとは、言葉のとおりポンプを真空にして、防火水槽や川等から水を揚水(水を吸い上げる)する為に使うポンプです。
水ポンプは、水を放水する為のポンプです。
例えば、防火水槽から水を汲み上げて放水する場合は、
①真空ポンプで水を揚水する
②水ポンプで放水する
という手順となります。
ポンプの動力はどこから取るの?
ポンプを回す動力は、PTO(Power take-off)とう装置を介してエンジンから動力を得ます。
消防ポンプ車の場合は、ギアをニュートラルに入れ、PTOスイッチで、動力を切り替えます。
各動力の切り替え時のイメージは次のとおりです。
①走行時
エンジン→トランスミッション→プロペラシャフト→車輪
②ポンプ稼働時
エンジン→トランスミッション→PTO→プロペラシャフト→ポンプ
消防車ポンプ自動車の放水能力はどのくらい?
CD-1型の消防ポンプ自動車に積載されているポンプは(A-2級)という規格になります。
各ポンプの規格は、次の通り法令で定められています。
動力消防ポンプの技術上の規格を定める省令の別表(第十六条関係)
級別 | 規格放水圧力 (Mpa) | 規格放水量 (m3/分) | 高圧放水圧力 (Mpa) | 高圧放水量 (m3/分) |
A-1 | 0.85 | 2.8以上 | 1.4 | 2.0以上 |
A-2 | 0.85 | 2.0以上 | 1.4 | 1.4以上 |
B-1 | 0.85 | 1.5以上 | 1.4 | 0.9以上 |
B-2 | 0.70 | 1.0以上 | 1.0 | 0.6以上 |
B-3 | 0.55 | 0.5以上 | 0.8 | 0.25以上 |
C-1 | 0.50 | 0.35以上 | 0.7 | 0.18以上 |
C-2 | 0.40 | 0.20以上 | 0.55 | 0.1以上 |
D-1 | 0.30 | 0.13以上 | – | |
D-2 | 0.25 | 0.05以上 | – |
A-2級であれば、規格放水量は、毎分2立米であり、高圧放水量は、毎分1.4立米となります。
圧を高くすると放水量が減るのは、水道のホースを潰すと勢いが強くなり、遠くまで水が飛びますが、実際に出る水の量が減る原理と同じとなります。
圧を高めると遠くまで飛びますが、出る水の量は減ります。
上記の表は、あくまで法令の最低限の規格であり、実物の性能的には、
A-2級であれば、規格放水量は、毎分2.4立米以上であり、高圧放水量でも、毎分2.0立米以上はあります。
圧を高めていけば、当然ですが、反動で1人では支えきれ無いくらいの圧力が掛かりますし、複数人で支えていても、油断をすれば吹っ飛びます。
管理人には、調整池の溜まった水をB-2級の小型ポンプを使って排水した事がありますが、「0.3Mpa」くらいでも、反動で吹っ飛びそうになってしまいました。
消防ポンプ自動車の機関部はどうなっているのか?
前置きが非常に長くなりましたが、こかれら消防ポンプ自動車の機関部を紹介します。
エンジンからポンプに動力を伝えるPTO
写真の黒いシャフトが繋がっているのが、PTOです。
黒いシャフトの先がポンプ部となります。
真空ポンプ
動力シャフトが繋がっている楕円形部分の上側が真空ポンプとなります。
水ポンプ
狭くて写真映りが悪いですが、奥が水ポンプとなります。
思っていたよりも中身はガラガラだった!
始めて内部を見ましたが、思っていたよりも空洞でした。
消防ポンプ自動車のお値段は?
積載する資機材にもよりますが、概ね2千万円前後です。
ローコスト住宅なら家1軒分、自動車なら高級車が買えます。
正に家が走っているようなものですね。
しかし、ベースとなるトラック自体は、今どきの自動車から考えれば、ローテクと言わざるを得ません。
安全装備もABSとエアバックくらいしか付いていませんし、消防ポンプ自動車のベース車両に至っては、衝突安全ブレーキをもありません。
さらに4WDを選択すると、MTしか選べない車両メーカーもあります。
雪国では、4WDは必須なんですよ・・・しかしそれを選ぶとMTとなる。
AT限定免許では、運転できません。
ポンプ部(艤装部)の価格が高いのは分かるのですが、もう少しベース車両の性能を上げて欲しいと感じます。
消防ポンプ自動車を運転するには?
消防ポンプ自動車は、緊急車両となりますので、パトランプを全灯で、サイレンを鳴らして走ると、警察車両や救急車の緊急走行時と同じように、渋滞や信号があっても走れます。
頻繁にある事ではありませんが、消防ポンプ自動車を緊急走行させるときは、それなりに優越感を感じることができます。
「消防ポンプ車を運転してみたい!」という熱意のある方は、是非自治体の消防局か消防団に入ってください。
消防局は、常備消防といい、皆さんまお馴染みの消防署にいる職員の方々です。
対して、消防団とは、地域で不通に別の仕事をされている方々が、非常勤の公務員として、消火活動に当たる団体です。
いちおう形上報酬は出ますが、実際に手元に残ることは少ないですので、ほとんどボランティアと思っていただいた方が良いです。
消防団の方々の仕事は本当に大変です。
普通に仕事をしながら、24時間365日火事に備えています。
消防署の職員は、シフト制による24時間勤務となっておりますので、非番の日もありますが、消防団は、普通に別の仕事をしているので、関係ありません。
ですので、やはり続けるには、それなりに「地域を守っていくという高い意識が無いと務まらない厳しい仕事」であるとも言えます。
しかし、管理人が仕事で接する「消防団の方々」はみな意識が高く。
火事場には、いつ何時でも駆けつけてくれます。
本当に頭が下がる思いです。
全国的には、消防署の職員(常備消防)が充実しており、消防団という組織が役割を終えつつある地域もあるそうです。
消防団員の負担を考えると本来は、これがベストだと思いますが・・・
管理人の地域では、まだまだ 消防署の職員(常備消防)が充実 しておりませんので、大きな火災になればなるほど、消防団の皆さまの力が必要になってきます。
くだらないクレームにうんざり
2017年6月に愛知県一宮市の消防団の分団長ら団員7人が、昼食をとるために消防ポンプ車でうどん店に立ち寄った結果、市消防本部は、消防車を見た市民からのクレームを受けという事が報じられました。
消防の仕事は、24時間365日です。
火災はいつ起こるか分かりません。
ごはんを食べられない時もあります。
それが、「例えば、現場帰り丁度昼食時」になれば、「店に入って食事を摂る事」もあるでしょう・・・
例えば、赤色蛍光灯を全灯して、サイレンを鳴らしながら(所謂緊急走行)をして入店して来たらなら問題とは思いますが、そうではなく通常の走行している時です。
活動服を着ていたということで、店内で不適切な行動を取っていたというのであれば、クレームを止む無しと思いますが、どの報道を見てもそうは掲載されていませんでしたので、普通に食事を摂っていたと考えれます。
一体これのどこにクレームを言われる要素があるのか、管理人には理解できません。
再度申し上げますが、消防団は、地域の防火・防災・減災の為に頑張っている、一般の方々です。
もしかしたら、あなたの住んでいる家の隣の方かもしれません。
最近は、自分の勝手な主義・主張を通そうとする所謂「クレーマー」が多い世の中ですが、いちいちそんな輩を相手にしていては、仕事が回りません。
もし仮に管理人がそんなクレームを受けたらとしたら、
恐らく次の様に回答します。
何が問題なのですか?
消防団も人間ですので食事を摂ります。例えば、民間企業にお勤めの方が、会社の営業車で、会社の制服を着用したまま、食事を摂ることもあるでしょう。
それに対して、クレームをつける人はいませんが、それと何が異なるのですか?
消防団もたまたま活動の後で、食事を摂る為に寄っただけなのに何故、そのようなクレームを受けなければならないのですか?
日本の国内法に照らし合わせてどのような問題があるのか説明してください。
それでも、納得できないというのであれば、提訴していただいて結構です。
と言います。
もっと消防団が働き易くなるように、社会にその活動内容を広め理解が得られることを切に願います。
準中型免許で、消防ポンプ自動車が運転できない若者が増える?
2017年3月に準中型免許制度が施行されました。
CD-1型消防ポンプ自動車の総重量は、概ね5トン未満です。
管理人は、古いん人間ですので、普通免許で、8トンまで運転できます。
その後の免許改正では、5トン未満までとなった様です。
しかし、2017年の3月の制度改正では、3.5トン以上7.5トン未満については、新たに準中型免許制度が施行されましたので、 準中型免許を持っていないと消防ポンプ自動車が運転できなくなりました。
これは結構痛い制度改正です。
消防ポンプ車は、現場に持っていく事ができてナンボの物です。
今日・明日すぐに問題になることはありませんが、これから何年か掛けて消防団の世代が変わっていく中で、かならず準中型免許を持っていない人が増えていく事が予想されます。
2017年3月以降に免許を取得した方は、消防ポンプ自動車を運転できない訳です。
消防団は平均年齢も高齢化してきており、なかなか若い世代が入ってこないという問題もありますが、新たに準中型免許を取らないといけないとなると益々、団員の確保が困難な状況となってしまいます。
準中型免許制度もやっぱり天下り先を確保する為の国策事業か?
管理人には、今更なぜこんな制度を制定したのか理解ができません。
少子高齢化社会となり、新たに免許を取得する若者が減ってきているのは事実ですので、これも恐らく天下り先を確保する為の国策事業だと考えます。
免許関係の施設(免許センターや自動車学校)には、結構元警察官がおられます。
つまり警察官の天下り先や再就職先となっている訳です。
当然、少子高齢化で免許を取得する若者が減ってくれば、この業界はに取っては、死活問題です。
ですので、新たな免許制度を制定して、一定の利用客を増加させるという具合なのです。
適当な理由を付けて、必要性を説明していますが、所詮これまで無くても大して影響がなかったものなのです。
そこまでしてでも、天下り先・再就職先を確保したいのかと考えると、国のやる事には辟易してしまいます。
まとめ
価格は家が1軒建つくらい
排ガス規制の関係で、ベースのトラックの価格が約100万高くなった
機関部の中身は思ったよりも空洞だった
消防団は大変な仕事です。みなさんの理解とご協力を!
準中側免許制度は、警察関係者の天下り先・再就職先の確保の為!
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