本日も相変わらずの底辺地方公務員の管理人です。
さて、住民税非課税世帯への10万円の支給が予定されている・・・
【住民税非課税世帯等に対する臨時特別交付金】についてですが・・・
対象世帯の抽出が難しくて、頭を悩ませております。
今回この制度の支給対象は・・・
- ①:令和3年12月10日を基準日として令和3年度分の住民税が非課税である世帯(但し、住民税が課税されている者の扶養親族等のみからなる世帯を除く)
- ②:①のほか新型コロナウイルス感染症の影響を受けて家計が急変し、①と同等の状況である世帯
となっています。
今回の本題は①ですが・・・
まず②の令和3年度の住民税非課税世帯と同等の世帯の判定基準から掲載すると・・・
令和3年1月以降の任意の1か月の収入により経済状況を推定するとなっており
収入の種類は、非課税の公的年金(障害年金等)は含みません。
申請はなんと【自己申告】です。
所得を証明できるモノ(給与明細等)がなければ、申立書でもOKというかなりいい加減な内容です。
で、判定なんですが・・・
任意の1か月の収入×12 = 住民税非課税世帯と同等の収入
であれば、支給対象となるわけです。
つまり、申請時点では、ウソでも申請できるという点に問題があります。
例をあげると・・・
1月~12月トータルの年収が・・・1,000万であっても
特定のある月の収入が【0】であれば・・・
0×12=0
なので、申請がとおり給付が受けられます。
令和3年中の所得が確定して住民税額が確定するのが早くても令和4年の5月以降ですので・・・
所得が確定するまでに申請してしまえば申請したもの勝ちになってしまうんですね。
また、支給した後に所得が確定し、住民税課税世帯であることが分かった場合には・・・
また、決まっていない様ですが・・・
おそらく返還を求めることになると思います。
支給したものの返還を求めても戻ってくることはほとんどありません。
モラルハザードと言われている時代の中で・・・
性善説に基づいた考え方をしている制度自体に疑問を感じざるを得ません。
考えただけでゾッとしますね。
次に、今回の本題の①の住民税非課税世帯等の対象なのですが・・・
一見、簡単そうに見えるこの条件ですが・・・
実はそうではありません。
言うが易しですが、実施に対象者をデータ抽出しようとすると実はかなり難しいのです。
とくに【但し書きの:住民税が課税されている者の扶養親族等のみからなる世帯を除く】という条件はかなり頭が痛い条件となります。
データを抽出する場合のフローを考えると次のようになります。・・・
1:令和3年度の住民税非課税世帯をとりあえず抽出する(これはできる)
2: 1で抽出したデータに令和3年1月2日以降に転入した者(転入前の自治体に所得照会要のため)がいる世帯はとりあえず除外する(これはできる)
3: 1で抽出したデータに無申告者がいる世帯はとりあえず除外する(これはできる)
4: 1で抽出した世帯構成員の被扶養状況を調べる(これはできる)
5: 住民税が課税されている者の扶養親族等のみからなる世帯を除く(実はこれが非常に困難)
6:2の転入者はマイナンバーで住民税課税状況を前住所地に照会する
7:3の無申告者には住民税申告をさせる
8:世帯全員が令和3年1月2日以降に転入した場合は世帯全員の住民税課税状況を 前住所地に照会する
となります。
住民税は世帯ではなく個人単位で課税されます。
扶養・被扶養の条件も個人単位です。
ですので、世帯単位で【 住民税が課税されている者の扶養親族等のみからなる世帯 】か否かを、機械的に抽出することができません。
例えば・・・
Aさん・Bさんの2人の住民税非課税世帯を例に考えてみると、扶養・被扶養の条件によって次のとおり条件が分岐します。
- ①:Aさんを住民税課税者のXさんが扶養にとっており、Bさんは誰も扶養にとっていない→支給対象
- ②:Aさん・Bさんともに住民税課税者(それぞれ別の人でもOK)が扶養にとっている→支給対象外
- ③:Aさんを住民税課税者のXさんが扶養にとっており、Bさんを住民税非課税者のYさんが扶養にとっている→支給対象
SQLを叩ける人であるならば、容易に想像がつくかと思いますが・・・
この条件を機械的に抽出することはかなり難しい・・・
住民税が課税か非課税かの条件だけならなんとかなるのですが(それでも令和3年1月2日以降に転入した者や無申告者がいる場合は個別に課税状況を調査する必要がある)・・・
そこに扶養・被扶養の条件が入ってくるとハードルがかなり上がります。
結局、住民税非課税世帯の世帯員が1人でも誰かの扶養にとられている場合はすべて画面を目視して確認する必要があるわけです。
国は【簡易に支給する仕組み】と謡っていますが、その中身は全然、簡易ではありません。
しかも、令和3年1月2日以降に転入した者については、マイナンバーを使って、前住所地に住民税の課税状況を照会する必要があります。
この照会というのも言うが易しで・・・
実際には、一人一人、手入力で照会する必要があります。
また、照会した結果を、一人一人、画面を見ながらシステムに入力する必要があります。
おそらくこの件数は、規模の大きな自治体になれば、何千人~何万人という規模になるかと思います。
お金を掛けてシステムを作れば、システム内で情報照会を掛けることもできますが・・・
今後使うか分からないシステムの為に何百万円~何千万円も掛けることは現実的ではありません。
マンパワーで一人一人、照会するとなるとかなりの人員を要します。
さらに付け加えると、マイナンバーを使った情報照会は、その履歴がマイナポータル上に残ります。
国は、【申請や同意の必要なく】前住所地に住民税の課税状況を照会できるよに法整備をするようですが・・・
照会された結果として、住民税が課税されていることが分かり、支給対象とならなかった世帯の方は、マイナポータル上に情報照会された結果だけが残る(要するに情報だけ見られて金は貰えない)ので、あまり良い思いはしないと思います。
個人情報が勝手に見られて不愉快だ~と文句を言われる可能性があるわけですよ。
国会議員の数は減らさないくせに・・・
職員の数が激減している地方自治体には無理な仕事を押し付ける・・・
ホント政府はクソですね。